記憶がかたちになる場所

A lush, green landscape with terraced agricultural fields and scattered houses surrounded by dense trees, with hills in the background.

「Heritage」は、世代を超えて受け継がれる文化的記憶や感性を映し出す言葉です。「Kayu」はインドネシア語で“木”を意味し、自然素材の温かみと落ち着いた存在感、手触りの美しさを象徴します。中でもカユ・ケタック(Lygodium circinnatum)は、インドネシア各地でバッグや帽子、インテリアに用いられてきた伝統的な繊維です。つる性ならではのしなやかさと強度を併せ持ち、その存在感は控えめながら確かな品格を放ちます。現代のクラフトに寄り添い、素材そのものが語る美しさが、静かに心に響く—そんな魅力をもつ素材です。

野生に根づく起源

もともとは野生から採取されてきたカユ・ケタックですが、需要の高まりとともに、バリやロンボクなどでは自然個体群への負荷が課題となっています。現在は、エスノボタニーの研究や地域コミュニティの取り組みにより、過剰採取を避けつつ、持続可能な栽培と育成の方法が慎重に探求されています。こうした努力が、素材の希少性と美しさを未来へと静かに継承していきます。

こうした取り組みは、種を保全するだけでなく、職人たちの技と創造性に新たな舞台をもたらし、地域経済を支え、その土地に根ざしたデザイン言語を未来へつなぐことにもつながっています。

自然との対話から生まれるものづくり

Stacks of woven baskets and brooms made from natural materials, displayed against a dark wall, with some hanging on the side and others piled in front.

こうした思いを重ね合わせると、私たちが大切にしたいのは流行を越えて残るもの——伝統と自然の対話、人と心のつながり、過去から未来へと続く可能性です。素材ひとつひとつの声に耳を澄まし、その個性をいかしながら、誠実さと意図をもって形にしていきます。

カユ・ケタックのような素材を丁寧に引き上げていくことで、長く農村の暮らしを支えてきた静かなクラフトへの理解が広がることを願っています。可視性が高まれば、より責任ある発展につながり、栽培技術の洗練を後押しし、そして何より、その技に心を注ぐ人々が正当に評価される道がひらけていきます。

そっと囁く静けさ

Heritage & Kayu の作品は、静かに佇みながら、そっと語りかけます。繊維がもつ柔らかな温度と、触れた瞬間に伝わる奥行きのある風合い。丁寧な手仕事だけが生み出せる、確かな静けさと存在感。

手にしたその時から、日々の空間に自然と溶け込み、暮らしに柔らかな余白をもたらします。

ADIEN RAHARJA ダン

— 社長 & 創業者